電子帳簿等保存法とは
電子帳簿等保存法(以下 電帳法)はデータによる保存要件を規定した制度で、対象書類により大きく以下の3つの保存法に分類されます。
1.電子帳簿等保存
2.スキャナ保存
3.電子取引
保存法と対象書類の関係はこちら。
参考:国税庁HP
そもそも電帳法は、納税者の帳簿や国税関係書類の印刷および保存に費やす業務の負担軽減を目的としたデータ保存を可能とする制度です。
したがって、電帳法に対応することが「経理」という「テレワークができない職種」という印象を根底から変革することのできるチャンスと言えるでしょう。
例えば、以下のような業務は、経理として当たり前と思われているのではないでしょうか。
・総勘定元帳の印刷
・補助元帳の印刷
・元帳のファイリング
・ファイルの背表紙作成
・元帳の科目インデックス用のタックシール作成
・領収書やレシートのナンバリングとファイリング
このような業務すべてが必要なくなるのが電帳法対応です。
また、最低でも7年間の保存義務がある書類の収納スペースが業務スペースを圧迫してはいませんか?
もしくは別室をすべて書類保管庫として利用していることはありませんか?
その保管スペースも必要なくなるのが電帳法対応です。
電帳法対応は経理の業務効率化に大きく貢献できることがメリットです。
費用を抑えて電帳法に対応する方法
電帳法と聞いて多くの人は以下のことを連想するでしょう。
・会計ソフトの入れ替え
・タイムスタンプサービスの新規利用
・ファイル保管サービスの新規利用
このような電帳法に対応したシステム製品は数多くリリースされています。もちろん、これらを利用することで経理担当の業務効率化を実現できます。
とは言え、費用対効果はどうでしょう。大規模な企業でこそ効果はありそうですが、私たちのような中小企業はできるだけ費用は抑えたいものです。
では、どのように電帳法に対応するのでしょうか。
2022年度までの税制改正によると多くの規制緩和がおこなわれています。
・電子帳簿等保存 ⇒ 一般的な会計ソフトでもデータ保存が可能*1
・電子取引 ⇒ 事務処理規程による改ざん防止措置でもタイムスタンプ不要*2
・スキャナ保存 ⇒ 訂正削除履歴の残るクラウド利用でタイムスタンプ不要*3
このように企業側の負担軽減という面で「紙」から「データ」への保存形式変更のハードルが下がったと言えるでしょう。
そのため、費用の追加負担は最小限に抑えることが可能となりました。
ただし、紙保存という当たり前の業務をデータ保存に変革するために重要なのは現在の紙運用を言語化することが最初のステップとなります。
*1 一般的な会計ソフトの要件とは
会計ソフトについて以下の備え付け
・システム概要書
・システム仕様書
・操作説明書
・事務処理マニュアル など
保存場所には以下を備え付け
・パソコン、モニタ、プリンタなどの操作マニュアル
※記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておく
※税務調査において税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしておく
*2 事務処理規程とは
具体的な内容は以下の通り
・目的 ~ 目的や参照している法律など
・適用範囲 ~ 規程が適用される範囲の人
・管理責任者 ~ 規程の管理責任者
・電子取引の範囲 ~ EDI、電子メールなど
・取引データの保存 ~ 保存場所・保存年数など
・対象となるデータ ~ 対象となる文書(見積書類・納品情報など)
・運用体制 ~ 責任者などの名前
・訂正削除の原則禁止 ~ 訂正や削除の原則禁止
・訂正削除を行う場合 ~ 訂正や削除を行う場合の内容や方法
国税庁HPより
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
*3 訂正削除履歴の残るクラウドとは
以下のような製品
・eco会計クラウド
・NI Collabo360
https://www.ni-ware.com/function/expense_eb.html
・奉行シリーズ 勘定奉行クラウド
https://www.obc.co.jp/landing/denshihozon/system
など
※現時点では、スキャナ保存に必要な要件である「保存された時刻の記録についての非改ざん性の証明」には前述したようなクラウドサービスに頼らざるを得ません。
紙運用のマニュアルからスタートする
現在の紙保存の運用は国税関係帳簿を始め、各種書類が適切に保管されていると思います。
したがって、そのマニュアルこそが「事務処理規定」として完成されたものであり、記述を「データ」に置き換え、電帳法対応可能なものへと作りこんでいきます。
しかしながら、昔から当たり前におこなっている業務にマニュアルのある企業は多くはないでしょう。この機会に業務マニュアルをデータで作成する。そして企業内で共有する。結果、人が入れ替わっても業務を継承することが可能となります。
マニュアル作成は非常に時間と労力がかかります。しかしながら、業務効率化のスタートは現状把握からの課題発掘および解決です。したがってデータ保存のための事務処理規定作成というよりも業務改善のためと考える方が成果につながると言えるでしょう。
作成の注意点は改ざん防止に対する内容を盛り込むことです。また、WEB領収書などプリントアウトして保管していたものについても考慮が必要です。
電帳法対応の効果
企業のすべての情報がデータとして保存が可能になることで以下のような効果が考えられます。
・印刷業務に係る作業時間が減る
・必要な情報を即座に閲覧できる
・社内の書類保管スペースが減る
・フロアのレイアウト変更が容易になる
・経理担当でもテレワーク可能になる
・出勤とテレワークのハイブリットによりデスクの数を減らせる
など
SDGsに関係する効果
・紙の消費量が減る
・紙の焼却量が減る
・焼却時の二酸化炭素排出量が減る
など
デジタルインボイスに向けて
電帳法の対応は言わば企業のペーパーレス化による業務効率改善。
近い将来にはデジタルインボイスにより業務の自動化も実現されるでしょう。そのためにも電帳法の対応はその第一歩です。
紙という今まで当たり前に取り扱っていた業務からの脱却をご検討されてみてはいかがですか?
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小さな疑問でも構いません。お問い合わせから丁寧に対応させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
※デジタルインボイスについては過去の記事をご覧ください。
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